谷底にて 【水樹】

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「み……ちゃん」 「水樹ちゃん」 「………ん……んぅ……」 ユサユサと揺さぶられる感触に私はゆっくりと目を開いた。 せっかく気持ち良く眠っていたのに、誰なんだろう。 「放送、そろそろ始まるよ」 黒髪ショートカットの女性が目に映った。 「……あなた、だーれ?」 「……水樹ちゃん、それ本気で言ってるなら、あちし泣いちゃうぜ。 てゆーか、舌まわってないじゃん、大丈夫?」 「……」 だんだんと記憶が蘇ってくる。 私は寝ぼけると、記憶が相当昔まで戻ることがある。 浅い眠りを途中で中断された時に時々起こる現象なのだが……。 ……またやってしまった。
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