谷底にて 【水樹】

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「……くす」 失礼だが、つられて少し笑ってしまった。 「初めて笑ってくれたね。 水樹ちゃんは美人なんだから笑っていたほうがいいぜぃ! さすればきっとモテモテでい!」 「……私は目立つの苦手だから、これでいい。 ……そんなことより、早く行くよ」 「勿体ないなあ……」 私は春奈の後ろに回り込み、腰に腕をまわす。 リュックは邪魔なので、お腹のほうにまわしてもらった。 そして、翼を強く羽ばたかせ、地面を蹴る。 フワリ、と体が浮いた。 そのままさらに羽ばたく強さを強める。 谷底がどんどん遠くなってゆく。 春奈は興奮気味だったが、暴れないという約束を守ってか、思ったより大人しくしていてくれた。
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