谷底にて 【水樹】

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「……」 「ま、それは置いといて。 あたしが付いて行くかどうかは水樹ちゃんが決めておくれ。 その判断に従うよ」 そうは言っているものの、顔に『連れて行ってください。お願いします』と書いてある。 犬の尻尾がついていたらブンブン左右に振れていることだろう。 「……はぁ。 ……私も貴女に助けて貰ったから、おあいこだと思うけど。 貴女が良いなら、一緒に行く?」 私一人では、些か心細いのと、恩をあだで返すのはどうかと思っての判断だ。 隆之くん達と会っていなかったら、きっと私は彼女と一緒に居ることを拒否したはずだ。 人に信頼されて……何だかくすぐたったい気持ちになった。 「もっちろん! 水樹ちゃん、大好きだー!」 そんな事を考えていると、突然飛び掛かって来られた。 そして抱き着かれ、ほお擦りされる。
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