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包み隠さず話して気持ちが少し楽になったのか、はたまた水樹の抱擁で子供のように落ち着いたのか、麻痺していた俺の感情がようやく動き出したようだ。
頬を温かいものがゆっくりと伝う。
それは顎の先端に溜まり、雫となって地面を濡らした。
「……貴方は、人を信じられなくなった私に手を差し伸べてくれた。
……だから、今度は私が手を差し伸べる番、だよ」
「……」
涙が次から次から溢れ出す。
我慢しようとしても止まらなかった。
水樹の言葉が、俺の閉じた心の扉をゆっくりと開いていった。
「……一人ぼっちだと、暗いことしか考えられないよ。
私も、そうだったから」
「みず、き…」
「……貴方にはとても感謝しているの。
そんな悲しい事を言ったら……私まで悲しくなる」
「……」
「……貴方には仲間がいるでしょ?
だから、もう、悩まないで。
……私が……。
皆が、居るから」
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