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「酷い傷だな…。大丈夫か?」
「だいじょ…ばない」
「日本語で喋れ」
「大丈夫じゃないデス」
昔のようなやり取りに、懐かしさと楽しさを感じる。
「どれ?ちょっと見せてみろよ」
「チョットダケヨ」
「殴るぞ」
「ごめんなさい」
二人で笑いあう。
蓮が近づき、頭に手を添えた。
「大丈夫だ…。すぐ楽になる」
(あ…れ?)
おかしいな…。腹が焼けるように…痛い。
下を見ると、俺の腹に何かが刺さっていた。
ナイフ…?
目の前が真っ赤に染まる。
とてつもなく寒い。
着ている上着やズボンが次第に赤く染まる。
「…?い…痛い…痛いよ…蓮…?」
「隆之……ごめんな」
その言葉と同時に腹に刺さっていたものが無くなる。
また血が出る。
手も、足も、体も全く動かない。
もう視界もぼやけて殆ど見えない。
(死にたく…ない…)
そんな考えとは裏腹に、体の方はどんどん力が抜けてゆく。
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