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蓮のシバかれた跡は佳織が完全に証拠隠滅…もとい治したので、普段通りの蓮になっていた。
「それで、何故俺を殺そうとしたのか…話してくれないか?」
「…ああ。
実を言うと、とくに理由はない。
目の前で人が死んだのを見て、周り全てが敵に思えて…誰も信じることが出来なくなった」
「……」
蓮は昔から表情を顔に出さないので、俺も彼の狂気を読み取ることが出来なかった。
「隆之が怪我をしているのを見て、心配どころか、チャンスだと思ってしまった。
…オレは…、馬鹿だ」
表情が陰り蓮は自分を皮肉る。
「蓮、確かにお前は馬鹿だよ。
バーカ!俺は生きてるんだからいいんだよ。お前らしくもない、もっとしゃきっとしろよ」
「…ありがとう、ごめん」
「気にするなよ、蓮が良ければだけど…また一緒に馬鹿やらない?一人で居るからどんどん思考がネガティブなほうに進んでゆくんだぜ」
蓮はしばらく下を向いていたが、ゆっくりと顔を上げた。
「…チッ、まさかお前に諭される日が来るとは思わなかったな。
……よろしくな、隆之」
久しぶりに蓮の笑った顔を見た気がする。
俺達は、ガッチリと握手をした。
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