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「そうだ、曲を変えましょう」
一通りの作業が終わり、やっとマスターと落ち着いて話が出来ると思ったのだが、彼はその一言を残してまた動き出してしまった。
彼は私に背を向けると、それまで流れていたジャズのレコードを止めた。CDではなくアナログ盤だというのも渋い。
マスターは、プレイヤーにセットしてあったそのレコードを外し、別のレコードをセットした。
ボリュームも少し触ったらしく、新しく流れてきた曲は、前の曲よりも少し大きく店内に響き渡った。
これもジャズだな。
ドラムとピアノだけのシンプルな前奏は、間違いなくジャズのものだった。
どこかで聴いた気がするな、と思っていたら、その簡易な旋律にサックスが入ってきた。
私は驚いて声を上げた。
「ああ、これ」
「ええ。ジャズを聴かなくても、これは知ってるという方は多いでしょう。テイク・ファイブです」
マスターは満面の笑みで応えた。
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