#01 Take Five

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 「そうだ、曲を変えましょう」  一通りの作業が終わり、やっとマスターと落ち着いて話が出来ると思ったのだが、彼はその一言を残してまた動き出してしまった。  彼は私に背を向けると、それまで流れていたジャズのレコードを止めた。CDではなくアナログ盤だというのも渋い。  マスターは、プレイヤーにセットしてあったそのレコードを外し、別のレコードをセットした。  ボリュームも少し触ったらしく、新しく流れてきた曲は、前の曲よりも少し大きく店内に響き渡った。  これもジャズだな。  ドラムとピアノだけのシンプルな前奏は、間違いなくジャズのものだった。  どこかで聴いた気がするな、と思っていたら、その簡易な旋律にサックスが入ってきた。  私は驚いて声を上げた。 「ああ、これ」 「ええ。ジャズを聴かなくても、これは知ってるという方は多いでしょう。テイク・ファイブです」  マスターは満面の笑みで応えた。
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