#01 Take Five

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 マスターは、再びカウンターに手をついた。 「この曲が、大体5分弱です。これが終わるタイミングでお帰りになれば、終電に乗り遅れることはないですよ」  私は、改めて時計を見た。  おおよそ、終電の10分前だ。  ここから駅までの距離を考えれば、確かに充分な時間である。  なんとも粋な計らいだ。私はマスターにお礼を言おうと口を開いた。  と、その時。 「ありゃ?今日はもうテイク・ファイブがかかってるぞ?」  不意に開いた店のドアから、一目見てサラリーマンと分かる中年男性が入ってきた。 「やあ、いらっしゃいダニエル。いつものかい?」  その中年男性に、マスターが言った。  …ダニエル?  丸顔、丸ハゲ、丸眼鏡。どこからどう見ても純国産のそのオジサンは、ダニエルと呼ばれても全く動じず、逆にマスターにこう返した。 「ああ、ノエル頼む。今日なんか飲まなきゃやってられんよ」  …ノエル?
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