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私が、この二人のやり取りについていけずにキョトンとしていると、マスターとオジサンはそれに気づき、声を出して笑った。
「ああ、失礼しました。これは、当店の慣習みたいなものなんですよ」
マスターの言葉も、今ひとつピンと来ない。
「ここの店はな、みんなお互いをニックネームで呼び合うんだよ。俺はダニエル、コイツはノエル、てな具合にね」
丸眼鏡のオジサン…ダニエルの説明で、ようやく少し理解できた。
「ここに来る他のお客さんたちも、みんなそうなんですか?」
「ああ、そうとも。ジョンにリュークに、クリスにシドニィ。みーんな日本人だが、ここでは外人さんの名前で呼び合ってるのさ」
そうなんだ。
また変わったルールだな。
私が感心していると、マスターがさらに言葉を足す。
「従業員も一緒ですよ。今言ったシドニィっていうのは、当店で働いているもうひとりのバーテンなんです」
ノエルはそう言って、ダニエルに芋焼酎の水割りを差し出した。
ここでそれ飲むの、ダニエル?
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