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5分という時間は、あっという間に過ぎた。テイク・ファイブは名残惜しさを微塵も感じさせず、あっさりと終わってしまった。
「おっと、もうお時間のようですね。お二人とも、お会計ですよ」
私とダニエルは、飲み物一杯分の代金だけを支払った。
安い。チャージ(席代)も取らないのだろうか、この店は。
「5分だけのお客様に、チャージなんていただけませんよ」
ノエルはそう言うと、優しく笑った。
どうしても名残惜しい私は、帰り際にノエルに言った。
「マスター。今週末に、またゆっくり来ますので、それまでに私のニックネーム、考えてもらってもいいですか?」
ノエルは私のこの言葉を聞くと、満面の笑みで両手を広げた。
「また来て頂けるなら、喜んで。お待ちしていますよ」
たった5分少々の酒の席。
しかし、私は非常に気分が良かった。
新しい店に出会えた興奮と、程よく入れたアルコールが、私の中で気持ちよく回っていた。
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