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中学校最後の冬。
もうそろそろ雪が降って来るのではないかと言うくらい寒い日だった。
”片山セレナ”は唯一の肉親である父親の教会で朝の礼拝を行っていた。
膝をつき手を組んで祈りを捧げる。
すると、背後から父の声がした。
「セレナ。そろそろ学校へ行く時間ですよ」
振り返ればそこには礼服を着て聖書を片手に立っている父の姿。
セレナは父親と同じように微笑んで返事をした。
「はい。今日はなんだか良い事があるような気がします」
「そうですか……では、セレナにこれを」
そう言ってセレナの父は十字架のペンダントをセレナの首にかけた。
セレナは少し驚いた顔をして父を見た。
「これは……」
「いいんです。これはアノ人の形見ですから本当はセレナに持っていてもらいたかったので……」
父はそれだけ言うと柔らかく笑って見せた。
セレナの肩に軽く手を置いてからそっと離す。
「さぁ、行ってらっしゃい」
「はい、行ってきます」
セレナはゆっくりと教会を背にして学校へ向かって行った。
「神様。どうかセレナをお守り下さい……」
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