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「そろそろ授業始まるぜー、セレナそれしまっといた方が良いよ」
「あぁ、そうですね。ありがとうございます」
「いいえー、じゃ俺はあっちの席だから。香川も行くぞー」
「えー、もー……じゃあまた後でね、セレナくん」
ユウキはひめかを引きずるように窓際の一番前の席に歩いて行った。
タクマは廊下側のセレナの後ろの席、一番後ろ。
その席に座った。
丁度チャイムが鳴って”柏木聡”先生があらわれる。
その後ろから転入生だろうか、見たこともない制服を着て教卓の横に立つ。
整った顔立ちに切れ長の瞳は女子を魅了するほど。
柏木がざわつく教室に静かにするように促すと一旦横に立つ転入生を見て言った。
「今日からこのクラスに入ることになった」
「桜木リクト。……俺はこの時を待っていた」
その目は心なしかセレナに向けられていた。
ただポツリと呟いた一言が、何かを予言するように……。
「席は……そうだな、タクマ。お前の横にでも」
「はーい、教科書は俺持ってないんで俺が桜木に見せてもらいまーす」
「コラ、普通お前が見せてやるんだろーが。その前に学校に教科書持って来てないとはどういうことだ」
柏木とタクマのやり取りを聞いたクラスメイト達の間で笑いが起こっていた。
そのやり取りを聞いているのかいないのか、リクトは淡々とした足取りでタクマの横の席に着いた。
一瞬。リクトがセレナの横を通りぬけた時、目が合った。
その目は何か訴えてるようだった。
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