第一話

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一日の授業が終わり鐘が鳴る。 リクトの周りには人だかりが出来ていて、セレナは一言も話すことが出来なかった。 廊下に出て、今朝の面子が揃うとやはり話題はリクトの話になった。 「あの桜木ってセレナの知り合いか何かか?」 切り出したのはタクマだ。 「いえ?どうしてです?」 「いや、なんか授業中ずっとお前の事気にしてたみたいだったから」 「え?何?セレナくんは私のなんだから!!」 「いやそう言う意味じゃなくて……」 不思議そうにタクマが俯く。 ひめかが身を乗り出して叫ぶ。 呆れたユウキはため息をつき時計を見た。 「あ。やべ、俺部活行かないと」 「あー、俺も」 ユウキは茶道の家元でその腕をかわれて茶道部の補佐をしている。 タクマはと言えば学校一足が速いのが有名で、面倒見がよく、後輩にも慕われるサッカー部の部長をしている。 そんな二人をただ促すようにセレナは見た。 「二人とも行ってらっしゃい」 ニコリと微笑んでぺこりと礼儀正しく頭を下げる。 ユウキとタクマは「じゃあな」と手を振ってそれぞれ去って行った。 セレナはじっとこちらを見つめてくるひめかに首を傾げて見せた。 「ひめかさん?どうかしました?」 「え……?んーん、なんでもないから」 頬を若干赤く染めながらひめかは言った。 いつもはガンガン押してくるひめかでもセレナと二人きりになるとやはり女の子、恥ずかしいらしい。 タクマがもし居たら「気持ち悪い」とでも言われてるだろう。 その時だった。 柏木がこちらに向かって走って来る。 その顔はどこか真剣で、セレナを見つけると「見つかって良かった」と肩を上下させて居た。 「どうしたんですか?柏木先生」 セレナはそんな柏木に向かって問う。 ゆっくりと柏木は口を開いた。 「良いかセレナ、お前の家の教会の方で火が上がってるらしい……もしかしたら教会が、ってセレナ!?」 「セレナくん!?」 セレナは急に胸騒ぎがした。 だから話も最後まで聞かずに走りだした。 .
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