一滴目

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一滴目

……ぁの………ません………じょうぶ……。 声が聞こえる。 目を開けるとそこにはどこまでも青い空が広がっていた。 えっ……俺…どうして……。 何故俺は助かったのだろうか。そんな事を考えていると、 あんた、大丈夫かい? 見知らぬお爺さんが言ってきた。 あんた溺れていたらしいよ。 ………あぁ。ん?らしいってどうゆう事ですか? あぁあんたを助けたのは儂じゃあない。ほれあそこに。 お爺さんが指をさすほうには一人の女の子が立っていた。 礼を言うならあの娘に言いなさい。 分かりました。 そう言うとお爺さんは立ち去って行った。 俺はさっきの女の子の方へ歩いた。 だんだんと近付くたびに思う。さっきの歌を歌っていた女の子ではないかと。 あの…さっきは助けてくれてありがとう。 彼女は振り向きもせずただ一言。 ……どういたしまして……。 俺、遠峰 蒼って言うんだ。君は? ………………………。 沈黙。だが彼女も黒い長髪の持ち主でやはりさっきの女の子の面影があった。彼女が名乗るのを待っていると彼女が振り向いた。 やはりさっきの女の子だと思ったのは俺の両目と彼女の左目が合った瞬間だけだった。何故なら彼女の左目は金色に輝いているのに右目は黒曜石を溶かしたようにどす黒く鈍く輝いていたがその右目には魂がなかった。 そしてまた彼女は一言。 ………癸 瑠々……。と。
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