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五滴目
癸さんに助けてもらった次の日に俺は彼女と友達になることが出来た。
癸さんはどうしてあんな沖合を泳いでいたの?
………海は……私の…生まれた場所であり……家のようなものなんです。
それってどうゆう事?
……私、この島の人間じゃ……ないんです。何処から来たかまったく覚えていないんです。
……そーなんだ。
はい………。
―マズイな会話が続かない。何か話さないと―
その時、髪を撫でるような優しいそよ風が吹いた。
癸さんの黒髪が靡くその顔に俺はまるで何かにとり憑かれた様に見とれていた。
何ですか?……先輩…。
えっ?あぁゴメン、癸さんがとっても綺麗だったから。
からかわないで…下さい。
癸さん。
はい?
こんな事聞くのはデリカシーがないって思われるかも知れないけど――
眼の事は聞かないで下さい!!
俺が自分の台詞を言い終わる前に癸さんが遮った。
ごっごめん。
皆、そうです。私を初めて見た人は皆この眼の事を知りたがる……どうして……。
この時癸さんは泣いていたのかもしれない、でもこの時の俺には癸さんを慰める事が出来なかった…
じゃあ今日はここまでなぁ。
おい、遠峰。次からは屋上行くなよぉ
う~っす。
俺はあの後やるせない気持ちを抱えながらも屋上を後にした。
せっかく友達になれたのに……
そんな事を考えていたら運悪く担任にでくわした…
こってりしぼられた俺には午後の授業なんか頭に入るわけもなく。
はぁ…。
また他人に逆戻りかな……
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