前奏

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人間は弱い。 弱いながらも今を生きる。 それは何故だろう? 趣味のため?死にたくないから? この時の俺には全く検討もつかなかった。   φ 俺があんなバカ女と付き合うことになるだなんて誰が予想しただろう? あんな常識外れの気違い娘に好意を寄せる羽目になるだなんて俺も堕ちたものだ。 ……正直な所、こんなのは恥ずかしいが故の建て前である。ひねくれているとも言うが。 俺が風花を好きになるのは運命だったかのように感じる。 それは何も予知などではなく、クサイ話、神様が巡り合わせてくれただとかの類だと思っている。 そう思わせるくらいに風花は現代の女性とはかけ離れた何かを持っているのだ。 が、簡潔に言えばそれくらい俺たちはつり合っていないのだ。 まぁそれは置いておいて、現状を話しておこうか。 とにかくだ、俺の一世一代の告白が無事成功を遂げた後日。校内にこの恥行が一気に知れ渡ることに…… そもそも俺の周りにはお喋りな奴が多すぎるというものだ。 本当に自重というワードを知ってから生まれてきてほしかったものだ。 それはそうと、俺は退学届を担任の竹原に提出してからこの地を去ったので、勿論学校生活をウハウハと美女たちと戯れるつもりはなかった、全く。 が、意外な事にも頭つるっぱげの竹原が退学届は俺が戻ってくることを予測してキープしてあったらしい。 何とも俺の周りの奴らは諦めが悪いことだろう。 そんな訳で俺はまた、この桜高校一年として二学期を謳歌する事が可能だということだ。 そもそも俺は神崎から何故解放されて自由の身になっているのかを話さなければ物語は進まない。 そうだろう? 皆の話によると―― 誰にも気づかれずに桜市を離れた俺。 だけど周りの奴らは納得がいかなかったらしく、クラスメート全員を巻き込み、俺の捜索にあたった。 すると、俺が車に乗せられ桜市を出る姿を目撃したという人が現れ、一人一人の意見を照らし合わせて考慮した結果、俺の行方を探し当てることが叶ったというのが本末の結果である。 だが、俺が神崎家に縛られている以上、あの揺るぎない存在から俺を連れ戻すことなど無理であることは容易く考えられた。
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