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煙突から立ちのぼる煙━━━。
今日、シルビアが生まれ変わりの旅へと出発した。
あの日━━━。
彼女が天へと召された瞬間、私は肉体を失った。
愛しい彼女の亡骸に触れる事も出来ず、眠ったままの彼女を見つめる事しか出来なくなった。
けれど後悔はしていない。
私達の大切な娘━━━ソフィアを救う為にした事だから……。
あの時、シルビアと共に逝くつもりだった私に、神様は来世の約束をしてくれた。
私の命を奪わずに、再びコンピュータに戻して彼女の生まれ変わりを待てるようにしてくれた。
再会した時、私を完全な人間にすると言い、私に希望を与えてくれた。
クレルモンの時とは違い、約束された彼女との再会。
必ず巡り逢えると約束された再会の日。
私はその日を心待ちに、この時を生きて行く。
「パ~パ。何ぼ~っとしてるの?」
『え?あ、いえ。ちょっとママの事を考えてたんです。』
「そっか……。ママ、早く戻って来ると良いね……。」
『はは……。まだまだ先の事ですよ。少なくとも20年です……。』
恐らく彼女が産まれるのはこの2~3日中……。
クレルモンの没日とマクファーソンの誕生日を考えると、今回の生まれ変わりも同様だろう。
赤ん坊のシルビア……可愛いだろうなぁ……。
「パパ?またぼ~っとしてるし。またママの事考えてるんでしょ~。」
『あはは……。図星です……。』
その返事にソフィア(16)は笑っていた。
でもそれは仕方のない事……。
彼女を愛する気持ちは変わっていないのだから……。
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