ハチミツ☆

第一話

意味深な会話をしている双子の姉弟。

弟の光流は"MITSU"として活躍している芸能人。
彼は容姿端麗で頭も良く、運動神経も抜群でまさに文武両道な俳優。

…という"設定"になっている。

｢久々ね～。２人での仕事｣

｢今回は蜜華の運動神経を借りるしかないからな｣

実は"MITSU"の頭脳は光流。運動神経は蜜華。容姿は双子なので共通。
という２人の良いところを合わせてできた人物なのだった。

｢でも社長も思い切ったことしたわよね｣

｢あの人のﾁｬﾚﾝｼﾞ精神は今に始まったことじゃないがな｣

この事を知っているのは事務所の社長とﾏﾈｰｼﾞｬｰと両親、そして近しい友人の数名のみ。

本当は最初は光流しか芸能活動はしていなかった。だが、彼に運動神経抜群の双子の姉がいるとわかり、社長が目を付けたのが始まりだった。

｢そういうわけだから蜜華は明日詳しく説明聞いて来いよ。学校には俺が行っとくからさ｣

手に持っていた冊子を蜜華に渡しながら告げると、彼女も笑顔になる。

｢おっけ！じゃ、はい。これ｣

と、彼女は自分の髪の毛に手をやると、先ほどなびかせながら帰ってきた黒のﾛﾝｸﾞﾍｱを取ったのだった。
ｳｨｯｸﾞを取り、光流と同じ髪型になると本当に見分けがつかない。

｢………なぁ蜜華…これ止めね？｣

自分が身代わりを言い出したが、ｳｨｯｸﾞを被るのに今だ少し抵抗がある光流が提案する。

｢だめよ。ﾊﾞﾚるﾘｽｸは少しでも回避しなきゃ｣

片手で乱れた髪を手櫛で調えながらもう片手で冊子をﾊﾟﾗﾊﾟﾗとめくる。