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一人の女の子が全速力で走っていた。
黒のウェーブがかかったロングヘアをなびかせながら家に急いでいる。
「ただいま!」
家に着くなり叫びながら慌てたように玄関を開け、二階に駆け上がる。
「光流!」
そして中にいる人物の名を呼びながら乱暴に部屋の扉を開ける。
「おかえり蜜華。新記録じゃね?」
動じずに笑顔で彼女を迎えたのは彼女と同じ顔の彼女の弟。
姉の名は彩賀 蜜華(さいが みつか)。弟は光流(みつる)
二卵性だが髪型以外は瓜二つな双子だ。
「あんたからメールもらって全速力よ!」
荷物を横に置いて光流の目の前に座り込む。
「で?今回は?」
期待したような笑顔で目を輝かせながら聞くと、彼はベッドにもたれてそこに置いていた腕を体の前に持ってくる。その手には冊子があった。
「今回はサスペンス物」
光流がそう言うと蜜華が見た目にもわかるほどガッカリした表情になる。
「え~…じゃあ今度も光流だけ?」
「ところがだ!」
今度は光流が嬉しそうに声を上げた。
「今回は文武両道な刑事役。もちろんアクションもある!」
「ほんと!?やったぁ!」
蜜華が両手を上げて喜ぶが、光流は少し複雑な表情だった。
「同じ日に撮影がある可能性もあるからな…バレねーように気をつけないと」
「……そうね…」
深刻そうな声音に蜜華も思わず真剣な声で答える。
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