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「板倉さんって、冷え性で不感症だよねー、絶対。」
「あぁ、なんかそんなカンジだよねー。つーか、あの人、メカっぽいし。」
「ちょウケるんだけど。メカっぽいって何?メカがロボット作ってんのー?」
「絶対血管の中、オイル流れてんだよー。」
「ありえねー。でも茶いれても飲んでるの見たことないよね。お昼も食べてるの見たことないし。あの人どーやって生きてんの?ありえなくない?」
「だからメカだって!バッテリー切れたら動き止まると思うよー!」
給湯室で女子社員のお喋りのネタは英子のこと。多少の嫉妬を孕んでいるからこそ、同性への陰口は辛辣になる。
確かに、英子自身には何の価値もないことではあるが、彼女には一種独特の冷ややかな美しさがあった。経歴と実力と美貌。しかも異性に全く興味がないのに、異性からの注目を浴びてばかりいる。持たざる同性にはおもしろくない要素ばかりだ。
英子は資料室へ向かう途中、同僚のそんな会話を耳にしてしまった。
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