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英子は部長室のドアをノックした。明るい日差しがオープンになっているブラインドから差し込んでいるが、書類に埋もれたデスクやぎっしりとファイルの詰まった書棚のせいでなんとなく窮屈な部屋だ。
「部長、板倉です。お呼びですか?」
黒田は英子に一瞬視線を投げ掛けるとすぐに手元の書類に目を落としながら言った。
「ああ、板倉くん。ちょっと待ってね。コレ、目通しちゃうからさ。」
『いきなり何の話なのかしら?報告書は週末に提出したし……もしかしてクレーム?……ううん、そんなはずない。私が携わって全部チェックしてるんだし、完璧なはずだわ……』
「失礼します。お茶をお持ちしました。」
英子が思考を巡らせていると事務員がお茶をいれてきた。
「おう、ありがとう。板倉くん、お待たせ。あれ、ずっと立ってたの?こっち座りなさいよ。」
「はい。失礼します。部長、今日はどういったご用件でしょうか?」
応接椅子に掛けると英子は率直に尋ねた。もちろん、クレームについてだったとしての応対のシミュレーションは頭の中で終えている。何も問題はない。研究内容に関しては。
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