第一章

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チャンチャラリラ~ ファンシーな着信音に、私の脳はゆっくりと目覚める。 おかしいな、目覚ましはけたたましいベル音だった気が。 ぼんやりする頭で携帯を手に取れば、親友の名がディスプレイに表示されていた。 着信 坂野あずみ 090XXXXXXXX 「! も、もしゅもしっ!」 慌てて電話に出る。 焦りすぎて噛んでしまった、情けない。 向こうにも伝わったのだろう、小さく笑われてしまった。 『クスッ、おはようイヨちゃん、朝早くにごめんね?』 「う、ううん! もうしっかり起きてたから!」 着信音がしたときは、まだ布団に入っていたかった筈なのだけれど、 親友のあずの声で、脳はすっかり覚醒してしまった。 『今日、朝練あるよね?』 「う、うんそうだけど…」 実はこの時点で、あれ?となにか違和感を感じていた。 だけどその正体が掴めぬまま、布団から起き上がる。 『わたし昨日間違って、道場の鍵持って帰っちゃってたの… だから一緒に学校いこうかな、って思って』 「ははぁ、なるほど」 剣道部のマネージャーであるあずは、毎日道場の鍵を閉める決まりがある。 しかし朝の鍵開けは部長が担当で、彼女は関係ない。
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