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巧槻は大きく息を吐き、どうやら元凶であるらしい鏡夜に向き直った。
「鏡夜さん…何の用ですか?私は弟達を迎えに行かないといけないのですけれど…」
あの鏡夜に対して不快感を隠そうともせずに言いのけた。
部員達の間の気温が数度下がったが、それは決して杞憂などではなかった。
鏡夜はさして気にした風もなく答えているが、部員達は気が気ではない。
「往生際が悪いな。分かっているだろう?」
「さぁ?何のことでしょうか。私には分かりかねます」
「ならば率直に言おうか」
「いえ、結構です。もう帰りますので」
にっこり笑顔の鏡夜と、僅かに眉間に皺を寄せた不機嫌そうな巧槻。
パッと見、鏡夜のあの笑顔に対抗しているようにもみえる。
しかし、巧槻の頬をうっすらと覆う冷や汗で、どうやらそうでもないらしいことが窺えた。
「何度も言ったが、ホスト部に入れ」
「何度も言いましたが、入りません いい加減あきらめてください」
にっこり笑って言う鏡夜に、肩をびくつかせながらも要求を両断する。
「大体、何故私が要るのですか。部員は充分足りていると思うのですけれど?」
「お客様のニーズに応えるのも仕事の内でね。今のままでは応えきれていない層がある」
「別に私でなくとも良いでしょう。他を当たってください」
「お前じゃなければ応えられないんだよ。だから大人しく入ってくれるな?」
『………』
双方一歩も引かない言葉の応酬に、鏡夜に勝てた例のない部員達は唖然としていた。
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