冒険者探偵ウィリアム編 EPISOD 1

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港と云う場所で、客や通行人など周りの人も何人かは立ち止まって見ていたり、歩きながらその光景を眼にしていた。 「・・・」 消えて行く仲間達を見送ったロイムは、沈んだ顔で溜め息を吐く。 転がった杖を手にして、ヨロけながら起き上がった。 「ハァ~・・・、これで六度目かぁ」 しょんぼりしたロイムは、街の人ごみに消えていった。          ★ さて、昼を過ぎた頃である。 都市の中心から、やや右に逸れる通り。 石畳の道並びに石造りの白い外装をした一際大きい建物がある。 とんがり屋根を幾つも持った一風変わった建物だ。 周りの店や飲食店などからすると、大きくて立派だ。 隣の花屋と比較しても幅だけで三倍はあろうか。  その建物の扉の前に、彼の青年ロイムが立っていた。 オドオドした様子で、建物に入るのすら決めかねている様子。 入り口の上に掛かる木の看板には、【爽風に吹かれる白亜亭】と、書かれている。 此処は、冒険者と呼ばれる者達がチームを結成したり、仕事を貰う為の言わば斡旋所である。 剣や魔法などで活躍する冒険者達も、それなりのルールや掟に則り生きている訳だ。 (どうしよう・・どうしよう・・・入ろうかな。 でも、カリミア達が居たら、どやされるよぉ~) 何か思い詰めるロイムが、斡旋所の中に入るのを躊躇っていると、いきなりパッとドアが開いた。 「アッ」 ロイムは、驚いて横に退いた。 一枚の大きい引き戸が開かれて、ワイワイガヤガヤと明るい声の冒険者達が出てきた。  「おい、明日でいいか?」 「いいんじゃない?」 「じゃ、明日行こう」 「賛成っ!! 飲もうっ!!」 と、男女の元気な声が飛び交う。  「・・・」 ロイムの目の前の冒険者達は、どうやら仕事に有りついたようだ。  (ハァ・・・) ロイムは、入れ替わる形に館の中へと入った。 中に入ると、円形の奥まで吹き抜けるフロアになっていた。 フロアの真ん中には、長さ七・八メートルはある長い木の黒い掲示板が幅に余裕を持って三列並ぶ。  その両側に貼られた紙の群れを見つめる冒険者達が三十人近くは居るだろうか。 話し合う者達、後ろと前に掲示板を見て、アレコレ話す者達が真剣な眼差しで何かを探している。
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