冒険者探偵ウィリアム編 EPISOD 1

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1、その出会いは、雨の日に。 海風が吹く港街。 青い空・・・カモメが港の上空を飛んで行く。 朝、この港に渡って来た大型船が何艘も港に入り、大勢の客と荷物を降ろしていたり、乗せていたり・・・。 その、港から都市の中心伸びる大きい通りの上での事だ。 大勢の旅人や商人、荷を運ぶ荷馬車や、手押し車などが行き交う港からの入り口にて。 「うわぁっ!」 青い“ローブ”と云われる全身服を着た若者が、突き飛ばされて路上に尻餅を着く形で倒れた。 音を立てて、若者の横に持っていた杖が転がる。 その若者を突き飛ばした男性も含めて、数名の男女が若者を囲んで見下ろしていた。 赤毛の髪を背中に垂らし、細身の剣を左の腰に佩いたやや下半身の露出が強い女性剣士が腕組みして、倒れた若者を見下ろす。 表情には、怒りを孕んでいる様に見える。 「ロイムっ、此処でお別れだよ。 アンタをこのまま入れておいたら、チームに儲けが入ってこないからねっ!!」 赤髪の女性剣士の言葉を繋ぐ様に、鋼鉄の鎧を首から下全身に纏い。 ガッシリとした身体つきで、背の低い訝しげな厳つい顔の中年男が、同じく倒れた青年を見下ろして。 「やっとテメエとオサラバ出来るわ。 嬉しくて涙がでるよ。 あっ?! ふざけたクソガキがよっ!!」 と、罵声を浴びせる。 「ああ・・ゴ・ゴゴ・・・ゴメンナサイ・・・」 倒された青年は、可愛らしい顔つきの十五・・・か六歳程の若い男の子のような印象を受ける。 涙眼で弱弱しく見える今、一瞬女の子ともとれるかもしれない。 フードが斜めに頭に掛かり、金髪の髪を隠して顔にまで掛かる。 背も余り高く無い。 背中に弓を背負う髪の長い細身の若い女性が、都市部に向かって歩き出しつつ。 「もういいわ。 早くロイムをパーティーから外しに行きましょう」 冷めた言葉遣いで云う。 弓を背負った女性の言葉に従い、倒された若者を囲んでいた男女が都市の方に歩き出す中で。 ちょっと背が高く、黒い厚手の神官服と云われる特殊な刺繍を背中に入れたローブを着た男性は、細い黒目でギロリとロイムと呼ばれた青年を見下ろして。 「クズが。 次見かけたら斬ってやる」 と、凄みを利かせてから、海風にローブをはためかせて振り返り、先に歩き出した仲間の後を追って行きだした。 ローブの背中には、恐ろしい憤怒の形相をした悪魔の様な姿の刺繍が施されている。  
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