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すると、そこには半開きになった扉から、中を覗き込むようにしている真山先生の姿があった。
その表情は、苦笑。
何だか見透かされているような気がして、私は、ふいっと、そっぽを向いた。
「別に。そんなことないわよ。何の用かしら?」
ふふっ、と苦笑を濃くした真山先生は、部室の中に入ってきながら、
「いや、最近飛んでる姿を見ないからね、体調でも崩したかなと心配になったんだよ」
「体調不良だったら、そもそもここにいないわよ」
「ごもっとも。だけど、僕の予想も少しは当たっているんじゃないのかな?」
「え?」
「見たところ、心の体調不良、みたいだね?」
――……。
やっぱり、見透かされている。
私が黙ってしまったことで、真山先生は確信を得たのか、苦笑気味に言葉をつくる。
「礼くんがいないことと、何か関係あるのかな」
「――……解っているんでしょう、全部?」
すると、先生は肩を竦めながら、まぁね、と答えた。
「乙女の恋煩いは、時に国家を傾かせるから――――うわっ!! シャーペンは手裏剣じゃないぞ謠羽くん!!」
「あっ、あなたが余計なこと言うからじゃない!! 誰がこっ、恋煩いですって!?」
手元にあったありったけのペンを手裏剣として投げると、私の怒りも幾分収まった。
「それで? あなたが私の前に訪れるのは、決まって凶兆だと確信しているのだけれど、今日は何の用なのかしら?」
うん、と真山先生は壁に刺さったシャーペンを引き抜きながら答えた。
「今日はそんなに悪い知らせじゃないと思う。むしろ、君にとっては面白い知らせじゃないのかな」
私にとって、面白い知らせ?
何よそれ……まさか、礼のことで何か……?
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