帰りのバス

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初めて知り合ったのはどの時だっただろうか? 同じ高校出身で、同じ大学へと進んだ仲の良い女友達、百合子の紹介で、僕は理沙と知り合った。 百合子に誘われてカラオケやらボーリングやらに行く度に、僕と理沙は仲を深めることになった。 初めは赤の他人でしかなかった理沙は、今では僕にとってただの友達とは言えない存在となっていた。 今日も百合子の提案で、百合子とその彼氏、理沙と僕の四人でテーマパークへと遊びに行くことになった。 その帰りのバス。必然的に今日一日僕とペアで行動をしていた理沙は、僕を窓際の席に座るよう促す。 「窓際じゃなくていいの理沙?」 理沙は黙ってコクリと頷く。 「でも行きの時は、酔いやすいから窓際じゃないと駄目だって……」 「いいからさっさと座りなさいよ裕樹。あんたがそこにいると座れないじゃない」 百合子に押し込まれるようにして僕は窓際の席に座り、すかさず隣の席に理沙の体がすとんと収まる。 ま、本人がいいって言うんだからいいか。 百合子とその彼氏が僕達の後ろの席に座って暫くすると、バスは夕日に染まった赤い路を走り出した。
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