帰りのバス

3/5
前へ
/76ページ
次へ
周りの同世代くらいの乗客達は、テーマパークで上がりきったテンションをそのままに、ガヤガヤと談笑を始める。 けど、僕も理沙もいつもそんなに喋る方じゃないし、一日中遊び回った後にそのテンションを維持できる程元気でもなかった。 窓際に肘を突き、空いた手のひらに頬を乗せ、僕はなんとなく窓の外の景色に意識を傾ける。 一定の間隔で通り過ぎる街路樹。 リズミカルに響き続けるタイヤの摩擦音とエンジン音。 そして、隣で早くもすやすやと寝息を立て始めている女の子の持つ特有の安心感。 若者達の喧騒で賑やかなこの空間でも、それらは僕を眠りに落とす条件としては十分だった。 どれくらい眠っていたかは分からない。 ただ、窓の方に傾けたままだった首がなかなか元に戻らないことからして、五分や十分じゃないだろう。 頬を乗せていた左手を首に回して凝り固まった筋肉をほぐし、骨を正常な位置に戻す為頭を右側に傾けると、こめかみが何かにぶつかりコツンと優しい音を立てた。 肩を動かさないよう慎重に首を捻る。 すると、僕の肩に理沙の頭が乗っかっていることが確認できた。 相変わらず可愛らしい寝息を立て続けている。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

403人が本棚に入れています
本棚に追加