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これは、ラッキーなんだろうか。
息を吸い込む度に、理沙の髪のシャンプーの香りが鼻孔を刺激し、同時に僕の心臓の鼓動をいつもの何倍も速くする。
いや、これは逆に拷問なんだと思う。
理沙の髪の匂いに刺激され続け、理沙の可愛らしい寝息を聞き続け、理沙の無防備な寝顔を見続けながらも、恋人でも何でもない僕は何もすることが出来ない。
なら理沙の顔を覗き込んだりしなければいいんだけど、それは一番出来そうにない。
そうして僕が無言のまま理沙の寝顔に釘付けになってから暫くが経つと……一瞬、理沙の瞼が開き、僕とばっちり目が合った──気がした。
一瞬の後には、理沙は相変わらず寝息を立てていて、一見寝ているようにしか見えない。
なるほど、そういうことか。
つまりは確信犯だ。
わざわざ通路側の、もたれる壁のない席に座ったのも多分そういうことだろう。
そっちがその気なら、僕にだって考えがある。
自由な左手を右肩に乗っかっている頭へと伸ばし、優しく撫でてみる。
一瞬ビクッという振動が右肩から伝わってきたが、それでも寝息は続いている。
次に僕は、肘から下だけ自由になっている右手を動かし、理沙の左手を探り当てる。
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