帰りのバス

5/5
前へ
/76ページ
次へ
狸寝入りしてたければ、いつまでもしてればいいさ。 たとえバスが目的地に着いても、僕がこの手を離さなければいいだけの話だ。 元々は赤の他人だった理沙と、僕は知り合い友達になり、時間を共有する度にちょっとずつ特別な存在になり、そして今、僕は一歩を踏み出した。 繋いだ右手が汗ばんできたり、心臓の音が理沙に聞こえそうなくらい大きくなってきたり、拷問みたいな時間は続くけれど、僕はちっとも辛くはなかった。 だって、隣に座っているこの女の子のことを僕は好きなんだから。 いつの間にか、寝息は途絶えていた。 僕が繋いだ右手をそっと握りしめると、理沙の左手にぎゅっと力が入るのを感じた。 その瞬間、僕らは恋人同士になった。 はじまり。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

403人が本棚に入れています
本棚に追加