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「やっぱ、近所でこんな大きな花火大会やるんなら、来んと損やんね~。じゃ、うち向こうでみんなと待ち合わせやから~」
そう言うと、橋本は軽く手を振りながら人混みの中へと消えていった。
「え……?」
もしかして、俺の勘違い?
「は……はは、なんだ、そういうことかよ」
自然と顔が緩み、笑いが漏れた。
橋本は偶々ここを通っただけだってのに、俺は何を勘違いしてるんだよ。
だけど、それで気付いた。
間違いない。あんなに胸が高鳴る感情を、俺は他に知らない。
俺はいつの間にか、橋本のことが好きになっていたんだ。
その後暫くして待ち合わせのメンバー全員が揃い、一人ずつ女の子を紹介されたけれど、どの子の名前も俺は覚えられなかったと思う。
花火会場を歩いていても、露店にも同じグループの女の子にも目がいかず、自然とあの浴衣姿の無限笑顔を探していた気がする。
結局あの後一度も会うことはなかったけど、俺は夜空を彩る大輪の花を見上げながら、一つの決心をした。
──来年こそは、橋本と一緒にこの花火を見よう。
はじまり。
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