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時刻は夜―。
空は漆黒と化して、ただ月が見下ろしているだけの静寂な深林。
深林が途切れる場所には豪華な屋敷がある。
いかにも貴族の所有地のようだ。
その屋敷の一角に広いバルコニーがある。そのバルコニーでは、白とピンク色のワンピースを着た少女と真っ白い大型犬が遊んでいた。
「ラル!ほら、取ってきてちょーだい!」
少女は手に持っていた遊び道具のボールを遠くに飛ばそうと思い切り投げた。
すると、思わぬ方向に飛んでしまい、ついにはバルコニーから落ちてしまった。
ラルと呼ばれた白い犬は慕っているご主人様からのボールを取ろうとボールを追ってバルコニーから飛び降りる。
少女は心配になってバルコニーの手すりまで駆け寄った。視線の先には元気に吠えながら深林に向かって走って行く愛犬がいた。
「よかった…」
幸いにバルコニーは二階だったため、それほど危険はなかったのだろう。
ラルは深林の入り口付近まで走り目的のボールを見つけた。そしてボールを口にくわえご主人様の元に帰ろうとした時…ふと不慣れな臭いを察知したのだ。
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