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少女は暫く愛犬が戻ってくるまでバルコニーで待っていた。だが、なかなか戻って来ない。
少女は再び心配してお付きの侍女と共に、屋敷の玄関の扉から出て探しに行った。
屋敷から離れ深林の入り口付近に辿り着けば、その先からの深林の中は真っ暗で何も見えない。侍女はポケットから小さな懐中電灯を取り出してスイッチをつけた。
懐中電灯の光を深林に向け少し中に足を踏み入れれば、太い木の幹から白いふさふさした尻尾が見えた。
二人はそれに駆け寄ると、目的のラルだったので喜んだ。
「あぁ、ラル。よかった…。ラル、ここで何をしていたの?」
少女は優しくラルに尋ねる。ラルはくーん、と切なそうな鳴き声を洩らしながら頭を下げて鼻先をあるものに近付け示そうとした。
それを悟って侍女がラルの鼻先に懐中電灯の光を当て辿る。すると木の幹や地面の茶色ではなく黒いものが見えた。恐る恐る“それ”の上下左右と光を移動させる。
「きゃぁーーっ!!」
少女と侍女は思わず悲鳴を上げてしまった。何故なら、“それ”はボロボロで痛々しい男の子だったからだ。
「じ、ジミー…は…は、早く誰か呼んで来てっ」
「ぁ、はい。お嬢さま」
侍女は少女に懐中電灯を手渡し、言われた通りにその場を去って助けを呼びに言った。
彼女が戻ってくるまで、少女は愛犬と共に男の子のそばにずっと居た。
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