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月に雲がかかり、漆黒の闇に包まれた首都の外れ。ストリートチルドレンが大勢住むチルドレンパークから、少し都心に近い旧市街地で鳴り響いた2発の銃声。
路地裏に血を大量に流し倒れる小学生中学年程の二人の子ども。もう息はしていないだろう。しかし二人の子どもの手には確りと、それぞれゴミとしか言いようがない程の腐りかけたリンゴが握られていた。
翌朝、死体の周囲には人だかりが出来ていた。しかし、誰一人として子ども達の安否を気遣う者はおらず、皆一定の距離を置き、嫌そうな顔でひそひそと話をしていた。
この周辺では当たり前と言うほど銃声がするわけではない。しかし、月に一度あるか無いかの頻度で銃声が鳴り響くこの町では、銃声に不思議がる者は誰もいなく、朝まで二人の子どもは置き去りにされていたのだった。
「退いてください。道を開けて下さい」
そう言いながら現れたのは二人の男。
前を歩く男は、中年で警官の制服を着ており、後ろを歩く若い男はスーツにコートを纏いいかにも刑事風。しかし、両耳には幾数ものピアスの穴が開いていた。
子どもたちの近くに来ると、刑事風の男は制服警官に野次馬を帰らせるよう命令した。すると、制服警官は野次馬に帰るよう命令しはじめた。
刑事風の男はというと、死体に手を合わせると一言呟いた。
「これで5人目か……」
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