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「あっ……おい、ちょっと待て」
師範は手を伸ばしダイスケを呼び止めようとするも、既にダイスケはいなくなっていた。
一人で道場に立つ師範は、自分の顎髭を触りながら、深刻そうな顔で入り口を見つめていた。
一方、道場から急いで出て行ったダイスケは、一人うつ向き加減で歩いていた。
そしてたどり着いたのは、同じ道場に通うリョウの家であった。ダイスケはチャイムを鳴らすと直ぐに玄関は開き、中から緑色の髪でボブカット、両耳のピアス穴に釘を刺した中学生程の男の子が現れた。
「よう、ダイスケ。入れよ」
そう言い、ダイスケを招き入れた。
二人は薄暗いリョウの部屋に入り、それぞれの定位置に腰を掛けた。部屋には今流行りのロックバンドであるHumanKillerの曲が大音量で流れていた。
「ダイスケ。今日面白い物手に入れたぜ!」
ニタニタ笑いながらリョウは机の上にあった、錠薬をダイスケに見せたのだった。
「何これ……。また薬……?」
少し引き気味のダイスケ。
「ああコレはスゲーぜハンパねぇんだよ。記憶がなくなる程スゲーんだ気付くとヤベェ位スカッとしててさ今までで一番だよ」
明らかにハイ状態のリョウは、殆ど息継ぎすることなく喋りきった。
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