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なんだあれはと、困惑を口に。オスロは、そんな光景にただ目を見張る。
近づくそれに、
差し迫る異変に、
対抗して思考を展開させた。
これは、一体……。
いや、まさか。
しかし、それしか。
だとしたらばッ!
「やつめ……」
引き攣る表情。
呟き、さらに視線を遠くへ。
広がるのは――焼け野原。
生き物が死に絶えたはずの荒唐無稽の地。
頬を――張り詰めたように緊張する顔を、冷たい汗が伝う。
次に、オスロは叫ぶ。
「第二射だ。次弾も発射、急げッ」
逡巡。の間に部下と目が合う。
怯える者の眼で。
彼もどうやら同じことを思っていたらしい。他に可能性がなければ、当然だろう。
だからこそ、あり得ないからこそ、混乱し慄くそれに、まるで活を入れるかのように声を張り上げた。
「やつを、やつはなんとしても焼き払うんだッ!」
それまでの同情一切をかなぐり捨て、命じた。
一瞬の間を空け、兵士のやけくそ気味なイエスが返る。
森の中。
国境に今、戦慄が駆け抜けていた。
◇ ◇ ◇
一匹の狼が駆けていた。白い狼だ。
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