第一章 罪の名を

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「なんというやつだ、信じられん」 「首尾は?」 「直撃だ。だが、魔術だろう、防がれている。全くの無傷だ」  心配そうに顔を上げた部下に、黙って望遠鏡を渡す。受け取り部下は、 「まさか、クラスターは上級の魔術にすら匹敵する破壊力。現にこれだけの成果を挙げています。それが防がれる、無傷だなんて」 「信じられんが、やつはそういう実力の持ち主なのだろう。だから、本国はこれだけの攻勢を命じた。当然だ。それでもやつは、脅威だとも思っていないのだろうからな」  そうなれば罪人を裁くどころか、捕まえることも、まして殺すことだってできやしない。必ず殺すための手段を用いても、効果がなければしかたがないのだ。  なにより、このままもし、やつを自由にさせてしまえば、 (背負うのは、他国‐我々の手の届かない土地‐ときた)  結果は火を見るより明らかだった。  いや、それを証明する事態が、すでに迫っていたのだ。 「中佐ッ!」  高台の下である。物見のためのそこではなく、もう一つ下。関所の門の上にあたり、石の敷き詰められた屋根の部分だ。  もしもの時、そこは魔術兵及び弓兵の戦場となり、中央にはクラスターの発射台もある。当然、今という事態でそこには五十にも及ぶオフィール軍兵士が待機しており、そこからオスロを呼ぶ声がした。  声は、部隊長のものであった。 .
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