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「どうした」
「街道に、やつが現れました!」
「なに?」
そんな、馬鹿な。
報告に慌てて見たのは、森の間に作られた山向こうの街へと続く広い道だ。そこはクラスターを撃ち込んだ場所より少し離れた位置で――少なくともやつのいた所より二キロは離れている。
そこに、影が見えた。
白い狼だ。
「馬鹿な、もうそこまで抜けたというのか」
「中佐、どうすれば」
「これではクラスターは使えん、構えろ。この場所を抜かせるわけにはいかんぞ、なんとしても止めろ!」
怒号のような指示に、兵士たちは素早く応えた。
緊張に、鎧のすれる音が響く。
前衛の十八名が弓を構え、後衛三十六名は陣を展開。足元に青く輝く魔術陣を出現させれば、それぞれが詠唱を始める。
実戦などほとんど経験のない兵士ばかり。それでも手探りに、形だけはしっかりと、訓練通り丁寧に事を運ぶ。
そんな様子を見届け、オスロは再び街道へと視線を戻す。
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