第二話:僕と君とストーカー

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 なのに、何故、彼女は平然と僕の手を握って、離したと思ったら、別の男の手を握っているんだろうか? なんで僕の姿を見ても、表情一つ変えず、淡々と笑顔を振りまいているのだろうか。  そうか、きっと君は強いんだと僕は思った。君は僕のことを愛してくれている。けれども、アイドルと言うのは特定の人物に恋をする事は禁則事項とされているらしい。理由は、どうやら事務所というなんちゃらが、恋人が出来るとその人物を使ってお金が稼げなくなるからだと言うお話を聞いたことがある。  君は、僕のことを愛してくれている。けれども、僕の姿を見て愛していると言えば、事務所と言うところに何かを言われ、お仕事が出来なくなってしまうのだろうと僕は思った。君は、僕により多くの姿を見られるために、今はあえて何も言わず、男といやいや笑顔を振りまきながら握手をしているのだろうと思った。  僕は、君が本当に強いと思った。大好きな人が目の前に来たというのに表情一つ変えず、何も言わず、他となんら変わらない態度をとる君に、僕はやはり尊敬の念を感じざるをえなかった。  けれども、きっと君は辛いはずだ。僕は今日の夜、君が自由な時間、事務所、他の人々と言ったしがらみが無い時間に君とあって、君の辛さを少しでも分かち合ってあげようと、君が僕に向ける愛の気持ちのために、今日僕を見れる時間が短かった君のために、僕は君の前にあって、僕と言う大好きな人の姿を君に見せて、君が少しでも元気が出せるように、僕は今日、君に二人きりで会うことを決意した。
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