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「何だ? 礼には及ばないぞ。私はあくまでもヒーロー……」
ん? ちょっと待った。何だコレは。何だこの銀色のわっかは。そして何で私の両手がこの銀色のわっかに繋がれているのだ?
「公然わいせつ罪で逮捕する。一緒に来てもらおう」
……待て!? 逮捕だと!? 私のどこに問題があったというのだ。子供を助け、吠える悪党に成敗を与えようとしたところで私の味方であるおまわりさんがやってきて、それで……。
「待て!! 私とお前達は運命を共にする味方ではなかったのか!? 正義を共にし、悪を裁き、それがヒーローと警察の関係ではなかったのか!?」
「何を言ってるんだ? と言うかあんたこれで何度目だと思ってるんだよ?」
「もう三回目。第一今回はこの格好で幼い少女を襲おうとしていたらしいし。全く、変な奴が増えたもんだな」
何を言っている。私は幼い泣いている少女を助けようとしただけだぞ。それのどこに問題があったと言うんだ。
「そりゃ重罪だな。精神科にでも行った方が良いかも知れねぇ」
「だな」
目の前に見えるのは、白黒のボディー、頭には赤くくるくる回るパトランプを乗せたパトカーと言うものがあった。
「ほら、乗るんだ」
「ふざけるな……」
「は? 今なんか言ったか?」
「ふざけるなぁぁぁぁ!! 私は、私はヒーロー何だぁぁぁぁぁ!!」
私の叫びはむなしく、このおまわりさんと言う名を冠した悪党に、屈することになってしまった。畜生、私は、私は一体何をしたと言うんだ。正義のために行動し、正義と共に生きてきた私の行動のどこに間違いがあったと言うんだ!!
正義とは、自らの体のみを使うものなんだ!! 服などというもので体を隠すのは、断じてヒーローなどと言えるものではないんだぁぁぁぁ!!
かくして、コートを一枚のみ羽織った、自称ヒーローの裸の変質者は、執行猶予期間中の再犯行により、半年の留置所暮らしを余儀なくされたという。
~終~
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