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彼女は、僕を愛してくれている。ほら、今だって、君が向ける視線の先は僕がいる。あ、ほら、そうやって周りを見回して僕のことを探してくれているのだろう?
暗い夜道、閑散とした住宅街は、天上から照らされる月の明かりと、等間隔に散りばめられた街頭の明かりだけが、君の姿を、そして、僕の姿を照らしている。この静かな空間には、僕と君の二人だけ。僕と同じ空気を、僕と同じ雰囲気を、そして、僕と同じ時を過ごしている君だって、幸せなのだろう。だから、そんなに足を震わせて、だからそんなに周りをキョロキョロと見回して、だからそんなに君も震えているのだろう?
君の事を、僕は全て知っている。君が何という名前なのかも、君が今どういう仕事をしているのかも、君の住んでいる家も、君の性格も、君の笑顔も、君の体も、そして、君の好きな人も、全部全部、僕は知っている。
今日は急ぎの用事があるのだろうか。君は歩調を速め、何処かへと帰っていく。僕は思い出した。彼女は学生だった。急いで帰るのは当たり前だと。明日の学校の授業にも差支えが無いようにしなければならないと。ちゃんと勉強して、いずれ君は大好きな僕のところへとやってきてくれると思っている。僕はそう信じている。
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