──小さな少年と小さな少女の約束──

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「ねぇ、そら…」 ふと、少女が問いかける。 その少女は、人形のように小さくて可愛く、いつもニコニコしている。だが今はその笑顔が見えない。 「なに、くみちゃん?」 小さな少年がブランコを揺らしながら隣のブランコに座っている少女の方に聞き返した。 「わたしね、明日…お引っ越しするの。」 俯きながら言う少女の表情はよく見えない。 だが、悲しい顔をしているのだろう。 「お引っ越しってどこに?」 「遠い、ところ…」 「そうなんだ…」 小さいながらも遠い場所に行くと言うことは簡単には会えないとわかっていた。 「ねぇ、くみちゃん知ってる?」 少年は、少女に問いかける。 「…なにを?」 少女は俯かせていた顔を上げ、少年を見る。 「この世界はね、この碧空(あおぞら)の下でどこでも繋がっているんだ。」 「うん。」 「だから、きっと、いつかまた会える。 絶対にね!」 少年は笑顔で少女に言った。 少女は呆気にとられたような顔をした。 そして、コクリと目に涙を溜めながら頷いた。 「うん、そうだよね。ぐすっ。 永遠に、お別れじゃ…ないんだもんね。」 少女はぽろぽろと涙を零しながら笑っていた。 「…ねぇそら、ぐすっ…約束しよ?」 「約束?」 少年は、揺らしていたブランコを止め少女を見た。 「わたしね…必ずここに戻ってくる。 だからね、─────────。」 「うん、わかった。 ぼくとくみちゃんの約束だ。」 少年はそう言うと小指を差し出した。 「うん!」 少女も涙を拭い小指を差し出した。 二人の小さく細い小指が絡み合う。 「「指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ーます、指切った!」」 少年と少女は満面の笑みで約束を交わした。
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