序章

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 その男には記憶がなかった。 どれくらいの期間、それを失っているのかはわからない。  そしてその記憶が何なのか、ということもその男に会わないと理解するのは四次元閉塞定理を解く程に難しいだろう。  季節は秋、といったところか。  この街もすっかり都会になって昔のように農業さえうまくやっていれば生活には困らない、そんな時代ではなくなった。 おかげで人と人との関係は表面上という言葉で言い表すのがお似合いになっている。  本来、日曜日という日は多くの人が休息を満喫出来る日なのだが、どうも馴染めそうにない。  ・・  あれが起こってから。
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