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いくらなんでもシャロンの発言にはその理由を聞かなければ納得がいかない。
頭の回転が早いフェンリルは三手先の所まで読んでいた。
「お前、俺のことの半分はわかっていると言ったな。それはつまり俺と関わってきたということか?」
静かにシャロンは頷く。
「6年前以前に、俺の記憶が失くなる前に」
「理由は明日必ず言います。だからとにかく今日はここで居て」
負けじとシャロンも三手先まで読んでいた。
別にこんな時に心理戦もどきをしなくてもいいだろう、ただ二人には共通点が垣間見えた。
もう、
逃げ続けることは無理だろう。
いずれ、自分にも限界が近づいていると薄々と感じていたのでその女に頼っても良いかもしれない。
今回だって、死んでもおかしくない状況だった。
しかも、ずっと持参していた武器は全て壊れた。
こいつは女。
いざとなれば力で支配できる自信はフェンリルにあった。
こんな唐突に物事が進むのは不気味だった、それでも。
「一人」では何も出来ないだろう。
この時になってフェンリルは再確認するつもりでその女に言う。
「一つ条件がある」
そう言うと最初は顔だけ振り向いていたが、全身をその女に向ける。
「お前が俺の記憶が戻させることが出来るならここに居よう、それが出来ないなら俺はここに留まるつもりはない」
フェンリルは少なからずその女に期待はしていた。
なのに、厳しい条件を要求するということは、その女をまだ信用していないということだろう。
これはフェンリルの意思表示でもある。
そして、「あの日」のことについての情報はシャロンなら集められると思っていたからだ。
「出来るよ」
と、即座に応じたシャロンは続いて
「あなたの記憶が戻る手助けをしてあげる」
と言い切る。
自信たっぷりに言ったのではなかったが妙に説得力があった。
俯き加減の顔がこの時、フェンリルにはっきりと向けられる。
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