叙情的崩壊と月夜

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彼女…もといアイナは俺の渡した服をか細い腕で抱きしめ、潤んだ瞳で俺をじっと見つめる。 「あっゴメン!俺、すぐ出て行くから」 ですよねー、よく考えたら。美少女の生着替えを覗く気ですか俺は。 「待って…」 「へっ!?」 部屋を出ようと背を向けた俺は、白く細い腕にTシャツの裾を掴まれた。 何を待てと? アレですか?山口百恵的な?ちょーっと待ってプレイバック!プレイバック! 緑の中を走り抜けてく真っ赤なポルシェ? ネタが古すぎた事は謝ろう。 振り向くとアイナは俯いている。 「あの…助けてくれて本当にありがとう…。嬉しかった」 「あ、あぁどういたしまして」 「実は私ね、どうしてもやらなきゃならない事があるの。でも私ひとりじゃ出来ないし、ここには知り合いもいないし。見ず知らずのあなたにこんなの迷惑だろうけど………あなたしかいないの…。お願い…っ、私を助けて」 アイナは大きな瞳を潤わせ、泣きそうになりながら懇願した。
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