初めての恋~秋~

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千紘の秋 千紘は中学の頃に付き合っていた事があるので、恋愛経験は豊富とは言えないものの純樹より恋愛には疎くはない。 告白された次の日千紘は部屋の窓際で純樹の事を想いながらヴァイオリンを奏でていた。 途中で千紘の手が止まった。 突然携帯を手に取り純樹に電話しようとするが手が震えてなかなか電話が出来ない。 その後またヴァイオリンを手に取るが弾こうとしても、電話出来ない事のもやもやが増していき奏でるのではなくただ弾いているだけになってしまった。 ついに千紘は決心した。 携帯を手に取り純樹に電話をかけた。 「純樹くん、今度の休み、二人で横浜に行かない?」 千紘の心臓は張り裂ける程に揺れていた。 純樹は快く了解をしてくれたので、千紘はホッとしてまたヴァイオリンを奏で始めた。 千紘は学校で恋愛の話になると顔が赤くなり周りから恋愛してるの?ときかれてもそんな事はないとおどけてみせたり、帰りに純樹を待っていても一向に純樹は来ずに先に帰ったと聞かされ恥ずかしくなったりする事も多々ある。 そして、横浜へ行く日が来た。 千紘は緊張し、肩が震えていた。 そんな千紘を見た母は「私も初めての人とデートへ行く時はすごく肩が震えたよ。安心して、きっとその人の顔を見たら緊張も無くなるから。」 「わかった、お母さんありがとう。」 「それじゃあ行ってきます。」 「行ってらっしゃい。」 千紘は家を出た。 母は父親の仏壇の前で「千紘を見てたら私達が出会った頃の事を思い出すね。横浜の街路地をよく二人で寄り添いながら歩いた事今でもよく覚えてるよ。お父さんはデートの仕方も知らずに私がいつもお父さんの手を引っ張っていたよね。」と言い涙を流した。 でも母は微笑んでいた。 デートから帰ってきた千紘は、ニコニコしながら母の立つキッチンの前へ行き誇らしげに左手の指輪を見せた。 それを見た母は「今の千紘は指輪に付いているダイヤモンドのように輝いているよ。」と言った。 千紘は微笑んでいた。 それから数日後、街にはダイヤモンドのように輝く雪が降っていた。
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