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顔を上げて声のする方を見ると、そこには会いたくなかった男が笑みを浮かべて立っていた。
「やっぱり、奈津ちゃんだね!さっきからそうじゃないかと見てたんだ!
ここいいかな?」
男は、高校の時の同級生で神川龍一だった。
「えぇ…どうぞ…」
私は、さっき感じた心の痛みをまた思い出させてくれた龍一に、コーヒーをぶっかけたい思いだったが、顔は笑っていた。
「いゃあ~久し振りだね!何年ぶりかな?……大学の時以来だから…」
「6年ぶりじゃない?」
私は冷たい口調で言った。
思い出したくもないあの頃を、その原因を作った本人がヘラヘラと喋っている。
「そっかぁ~6年かぁ~。奈津ちゃんはちっとも変わってないねぇ」
そう言って、龍一は奈津子をまじまじと見た。
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