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男は知っていた。妻の浮気を、浮気の相手を。
男と妻のあいだに子供はいないが、男は妻を心から愛していた。
愛する者の裏切りに。それを知った時に男は思った。
“殺してやりたい”
妻のために働き、妻のわがままも許してきた。
だが今回ばかりは我慢できるはずもない。
男の頭の中に、話しあいで解決、などなかった。
選択肢はただひとつ。
妻も浮気相手も殺す。
男にたいする裏切りの代償は、命でつぐなわなければならなかった。
この時の男は、猟奇的な殺人鬼のようだった。
男が住むのは田舎町だった。大自然に囲まれた町。その町の外れに男の家がある。
この地方では、熊が出るので、銃を持つ者が少なくない。
それを利用して、男は殺傷能力の高い44マグナム弾を撃てる銃を買った。そして同時にフライフィッシングの道具一式も買った。
フライフィッシングをする者は、熊に遭遇する確率が高いので、威力の高い銃を誰もがもっていたのだ。
こうして男は、怪しまれずにあっさりと銃を手に入れた。
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