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帰り道、春川は機嫌がいい。
思う存分いじめたからだろう。
冬木はそんな春川を見て
楽しそうだ。
「そろそろ自分で歩け、馬鹿! 」
「悪い、夏山。
だが馬鹿って言うな」
夏山は俺から離れて春川の元へ
歩いていった。
その途中、夏山を呼び止めた。
「その……支えてくれて
……ありがとうな」
「な、何それ?
そんなに改まって礼なんて……。
馬鹿じゃないの? 馬鹿! 」
何故か怒る夏山。
女の気持ちはよく分からない。
1人で少し遅れて歩く俺に
秋谷が近寄ってきた。
無言で、ただ横を歩く秋谷。
「……ありがと。
……不良と戦ってた姿
かっこよかった……」
そう言うと秋谷は走って春川達の
方へ戻っていった。
「今……喋った? 」
弱々しくて、優しい声。
秋谷はあんな声だったのか。
声を聞いたら幸せになる。
そんな伝説を今なら信じれる
ような気がする。
秋谷の声は人を幸せにする程の
価値があると思う。
……たぶん。
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