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「行ってきま~す」
一軒の酒屋の店先から、半袖姿に赤と黒のランドセルを背負った、二人の子供が転がるように元気に飛び出して来る。
「これっ、純❗お前はいいんだよ❗」
その二人を追いかけるようにして飛び出した、四、五歳の幼い男の子を赤ら顔をしたエプロン姿のおばさんが取り押さえ、笑いながら声をかける。
「二人とも気をつけて行っといで❗」
「は~い❗」
そう言って、二人は元気に駆け出して行く。もう四年近くも繰り返された桜月家のあいも変わらぬ朝の光景だが、実はここのところ少しばかり状況が違っていた。
「ねえ、待ってよ❗待ってってばっ❗」
雪は、前方を早足で歩く少年に向かい、ちょっと怒り気味に言う。走ってきたため、左右両側に束ねた髪の毛が少し乱れている。
「な、なに?」
「どうして、そんなに早足で歩くの?私と一緒に行くのが嫌なの?」
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